みなさんは運動後に腹痛自覚したことありますよね?
食べた後走ると脇腹が痛いってやつ
腹部の動脈が相対的に虚血状態になっていたいんじゃないかと言われていますので、こればかりは食べてから走らないようにするしかないのですが
今回は腹痛ではなく腰痛のお話
週末は沖縄までグループ病院の救急勉強会に行っていました
珍しい疾患共有したり
知っておいた方がいい知識を共有したり
業務の質改善のヒントを得たり
多施設研究の協議をしたり
まぁうちのグループ病院だけで日本全国の3%の救急車が来ておりますので、ものすごい量の経験になります
そんな勉強会で
印象的な症例報告があったので共有します
走った後腰痛が来る疾患について
運動後急性腎不全
(acute renal failure with loin pain and patchy renal ischemia after anaerobic exercise)
ALPEという病態があります
アルフィーではなくアルピーです
1982年に日本人医師により提唱された疾患で、運動後の虚血性腎不全を特徴とします
通常の熱中症の時に発症するような横紋筋融解に伴うミオグロビン尿性急性腎不全ではなく、無酸素運動を契機に腎臓の血管攣縮が起こるのが原因です(1
短距離ダッシュなどの無酸素運動をした若い男性に後発すると言われておりますが、最近では低尿酸血症が背景に存在していることが示唆されており(2、遺伝的背景の関連も考えられています
遺伝的にもともと低尿酸血症がある人は、尿酸がフリーラジカルスカベンジャーとして機能できず、活性酸素が蓄積して血管攣縮に至るのではないかということです
診断ですが、まぁ尿管結石だろうとエコーを当てても水腎症がなかったりした場合、明らかに運動後の発症の場合には血液検査をしてみます
すると血清クレアチニン値が上昇しているので疑うきっかけとなります
造影CTでは当初ははっきりと所見が取れませんが、翌日改めて単純CTを撮ると腎臓に造影剤が残っており、さらにくさび形にwash outされている部分も存在していることが見て取れ、これで確定的となります
若い男子が急性発症の腰痛を訴えて受診したら、普通は尿管結石を考えたくなりますが、実はこういう疾患も隠れているのだと警鐘を鳴らしてくれた後輩救急医に感謝です
救急医は腰痛を訴える若年男子には
「ダッシュしましたか?」
と聞かねばなりません
(後輩救急医の受け売り)
特に5月、9月、10月などの運動が盛んに行われる季節に発症しやすいらしいので、身構えておきます
ただ、最近運動後ではなくても同様の疾患を発症することも報告されておりますので(3、若年男子の急性発症の腰痛には注意を払いましょう
1) Ishikawa I. Acute renal failure with severe loin pain and patchy renal ischemia after anaerobic exercise in patients with or without renal hypouricemia. Nephron. 2002 Aug;91(4):559-70.
2) Ohta T, et al. Exercise-induced acute renal failure associated with renal hypouricaemia: results of a questionnaire-based survey in Japan. Nephrol Dial Transplant. 2004 Jun;19(6):1447-53.
3) Lee J, et al. Clinical characteristics of acute renal failure with severe loin pain and patchy renal vasoconstriction. Kidney Res Clin Pract. 2012 Sep;31(3):170-6.