最近、ICUの早期経腸栄養プロトコルを立ち上げたのがいろんなひとの目にとまり
静脈経腸栄養学会の地方会でランチョンセミナーの依頼が来ました
僕が話せることなんてそんなないのですが…
( ;∀;)
ともかくも、栄養を担保するって大事なことですよね
日々の生活でも栄養が足りないことには動けません
僕は比較的省エネなので、食べなければ食べないで別に構わないのですが、人によっては5食くらい摂取していないと足りないなんていうことも・・・
ちなみに僕は3食きっちり食べると太ってしまいます
そんな栄養なんですが、栄養すると不都合をきたすこともあります
太るとかそういうことではなくて
最悪死にます!
それが
「refeeding症候群」
直訳すれば再栄養補充症候群ってところでしょうか
第二次世界大戦中に、解放された捕虜に食料を与えると心不全や神経症状を呈して死亡することが確認されました
これっておかしい話ですよね?
栄養が欲しい人に栄養したら死ぬんですから
その後アレコレ調べていると、闇雲に栄養を投与するとまずいんじゃないかということがわかってきます
・再栄養で循環血漿量が増加
→心負荷増大
・再栄養で血糖上昇
→インスリンが増加
→水、糖だけでなくK、P、Mgが細胞内に流入
→見かけ上、低Kや低Pとなる
・Pの低下
→赤血球の2,3-diphosphoglycerateが減少
→ヘモグロビンの酸素親和性が低下
→末梢でATP産生が減少
→エネルギー不足
・糖代謝が亢進する
→グルコースがピルビン酸まで代謝される
→アセチルCo-Aになる際にピルビン酸デヒドロゲナーゼが必要
→活性を発現されるためにチアミンピロリン酸(活性化ビタミンB1)が必要
→ビタミンB1が消費され欠乏
栄養を投与すると、逆説的に物質が不足するという事態に直面するんですね
一般に低リン血症は栄養療法開始後24-72時間で起こるとされます
1.0mg/dL以下になると意識障害、痙攣、筋力低下、不整脈、心不全、呼吸不全などを起こします
ある程度リン酸が貯蔵されていると72時間よりも遅れて発症するので注意が必要です
どんな人でrefeeding症候群になるかですが、もともと低栄養の人はきついです
・低体重
・急激で過剰なエネルギー負荷
・もともと厳格な菜食主義者
(肉や魚にPが含まれている)
・慢性アルコール中毒
・利尿薬乱用
このような人は要注意
最初の投与エネルギーを増やしすぎないのがポイントですが、250kcal/日で発症の報告もあります
(その人はもともと神経性無食欲症だったみたいですが)
当院では早期経腸栄養プロトコルを立ち上げておりますが、最初は10ml/h、1.5kcal/mLの持続栄養で開始しています
栄養は少量でいいのです
もう一つ対策としてリン動態を見ておくことが重要です
日々Na,K,Clの他、P動態に着目して血液検査を行なっています
今の所これでうまくいっておりますが、今後も慎重に栄養管理をしていきたいところです