木曜のカンファレンスで研修医から上がった質問へどのように回答したかということについて聞かれたので、改めてこの話題を書いておきます
先週から、毎週木曜日の夕方に新しいカンファレンスを始めました
研修医が確固たる自信が持てずにいたこと、聞きそびれたこと、見逃していることを拾い上げるカンファレンスです
研修医からは以下のような質問が上がりました
・輸血のタイミング
・吐血の際の消化器内科へのコンサルトのタイミング
・頭部挫創の時に糸で縫合するかステープラーを使うか?
・縫合処置後のfollow外来の適切なタイミングは?
・突然発症のめまいで考えねばならないことは?
順番に見ていきます
「輸血のタイミングについて」
これは現在も出血が続いているかどうかという点、どのくらい緊急性があるのかということを適切に評価する必要があります
来院時点で輸血がいりそうかどうかを判断しておいて、必要そうであれば来院時点で血液型とクロスマッチ用の検体を確保しておきます
ショック状態で明らかに出血している様子であれば、その時点でO型のRBCをオーダー
(型合わせなし、放射線未照射)
そうでなければ1000mL程度の細胞外液を投与して血管内Volumeが担保されるか確認します。
ダメなら輸血考慮、大丈夫なら輸血は控える。そんな判断をしています。
最近過剰輸液を避けるべく、なるべく早期に輸血の決断をするようにしていますが、過剰輸血も問題なので、必要十分な点を見極める努力を毎回しています
「吐血の際の消化器内科へのコンサルトのタイミング」
基本的にはバイタルの安定化が優先されます
救急現場でできることは、気道と呼吸の安定化、循環動態の把握です
鮮血を吐いていて、止血しないことには循環動態が落ち着かないのであれば、その時点でコンサルト
そうでなければ待機的で良いはずなので、原因まで考慮した上でコンサルトで良いと思います
「頭部挫創の時に糸で縫合するかステープラーを使うか?」
自分がどうされたいか考えたらわかると思います
後頭部にステープラーされたら痛くて仰臥位になれない気がします・・・
頭頂部で小さい傷ならステープラーの方が簡単で速くて良いかもしれませんが・・・
「縫合処置後のfollow外来の適切なタイミングは?」
翌日ガーゼ汚染しそうなほどの傷であれば翌日
そうでないなら、翌日感染成立というのは早すぎるので、2日後くらいが良いのでは
「突然発症のめまいで考えねばならないことは?」
本当にSudden onsetなのであれば血管病変を最後まで疑い抜くことが大事
というか、本当にSuddenなら普通は血管病変
例えば椎骨脳底動脈解離
痛みをともなわないこともあるし、延髄などは早期はMRIで変化しないこともある
通常はめまいが持続し、随伴症状があるはず(失調とか・・・)
研修医はMRIで異常がなく、症状が改善したことから末梢性めまい症ということで「良性発作性頭位めまい症」と診断していたが、良性発作性頭位めまい症は、半規管の中を耳石が移動して起こるめまいなので、頭位変換からめまいまで数秒あり、移動がおちつく1-2分程度でめまいもおちつくのです
なので、これは少なくとも良性発作性頭位めまい症ではない
持続しないので脳血管障害ではないとも言い切れない
前庭神経炎など、純粋な前庭神経の障害でめまいがおこっているかどうかと調べる方法として
Head Impulse Test (HIT)
というものがあります
自分の方を見ていてくれと患者にお願いし、20°程度素早く頭部を回旋させます
ずっと自分の方を向いていれば正常ですが、眼球が一瞬頭部について行って、遅れてこちらの方を見たとしたら、反射がうまくいっていないということなので、前庭機能が障害されていると考えます
研修医はHIT陽性としていました
ということで、持続はしないものの前庭神経炎なのでしょうか?
普通は持続しますけどね・・・
脳血管障害に戻りますが、普通はこれらも症状が持続するのですが、TIAのように、一時的な虚血からめまい症状が発症することもあります
また前述のHITもPICA領域の障害ならおこらないようですが、AICA領域の障害ならHIT陽性になってしまうようですので注意が必要
本当に突然発症だったのであれば綿密な経過観察が必要!
病歴聴取がとてつもなく大切!!
脳血管障害が疑われる場合は、神経内科か脳神経外科外来followをしましょう
といった内容でした