前回につづき、救急科専門医の魅力です
前回は研修医教育と相性が良いという話をしました
救急専門医の魅力①
では続きまして
僕が考える救急科専門医の魅力
①研修医教育を円滑にできる
②緊急度判断と対応ができる
③若手にチャンスが広がっている
のうちの②です
あらためて救急医学会の救急科専門医の説明を持ち出します
救急専門医とは
救急科専門医は、病気、けが、やけどや中毒などによる急病の方を診療科に関係なく診療し、特に重症な場合に救命救急処置、集中治療を行うことを専門とします。病気やけがの種類、治療の経過に応じて、適切な診療科と連携して診療に当たります。
救命救急処置とはなんでしょうか?
端的に申しますと
「死なないようにする」
ということでございます
救急科専門医は
何が切迫していて
何をしたら生命維持ができるかが見える
というわけなのです
症例を共有します
【症例】60歳代 男性
【主訴】呼吸困難
【現病歴】起立後の意識消失があり当院受診.降圧薬の調節をされ帰宅.翌朝から心窩部痛と呼吸困難が持続するため17時頃救急要請.
【嗜好歴】喫煙:20本/日 飲酒:ビール1本/日
【既往歴】
糖尿病
高血圧
心筋梗塞 経皮的冠動脈形成術後
感染性心内膜炎 僧帽弁置換術後
【家族歴】特記事項無し
【アレルギー】特記事項無し
以下は経過です
17:06 搬入 GCS4-5-6
BP75/55 HR150 RR38 SpO2 78%(10L)
17:07 抹消ルート確保 細胞外液全開投与
動脈血ガス採取
あれこれやりつつ、同時進行で診察を進めます
<身体初見>
眼瞼結膜貧血なし 浮腫なし
頚静脈怒張
呼吸音左右差なく清
心音弱い 心雑音なし
下腿浮腫軽度 末梢冷感あり
<胸腹部エコー>
心嚢液貯留なし
asynergyなし 左心室虚脱
右心室拡大 IVC呼吸変動なし
腹腔内出血なし
<血液ガス>
pH | 7.341 |
|
pCO2 | 27.1 | mmHg |
pO2 | 59.2 | mmHg |
HCO3 | 14.2 | mmol/L |
BE | -10.0 | mmol/L |
乳酸 | 110 | mg/dL |
血糖 | 273 | mg/dL |
そうこうしている間に意識がどんどん落ちていきます
17:18 GCS3-4-6
17:30 意識レベル低下 GCS1-1-1
17:33 気管挿管施行
17:34 胸部X線施行
→軽度うっ血あり
縦隔拡大なし
気胸初見なし
だれがどう見てもショックです
ではショックの原因はなんでしょうか?
原因に応じた対応が必要です
何もしなければたぶん数分で死にます
何をしたら死なずにすむでしょうか?
ショックには5種類あります
出血性ショック
心原性ショック
閉塞性ショック
血液分配性ショック
神経原性ショック
17:35 PCPS導入宣言
17:38 大腿動脈触れず
17:41 BP49/29
➡NAD 0.2mg投与
17:42 大腿動脈微弱に触知
➡NAD 0.3mg投与
17:48 PCPS開始 CT室へ