A型肝炎の人が増えているらしいです
感染症発生動向調査では例年100~300人ということですが、今年は上半期だけで400人越え
実は昨年、ヨーロッパとアメリカ大陸でA型肝炎が増えているということで、WHOから注意喚起がなされていました
どうも増えているのは、男性相手に性交渉する男性の間のようです
そして日本における感染者数の増加も、性交渉によるものが疑われています
これまでA型肝炎は経口感染が基本であるとされてきました
(E型肝炎はジビエなどで感染するので、こちらも注意)
糞便中に排泄されたウイルスが、水や食べ物を介して口に入ることで感染すると言うのが定説です
衛生状態が良く、水道の発達した日本ではあまり感染することはないとされておりますが、過去に貝類での集団感染もありました
個人的な話をすると、牡蠣が大好きで、たまにオイスターバーに行って生で牡蠣を食す時には、若干の後ろめたさみたいなものを感じながらも美味しくいただいておりました
職場の先輩(大学の部活の先輩)が大好きで、よく一緒に食べに行っていたのですが、お互い忙しくなりめっきりです
よくあんなに食べて感染しなかったと、胸をなでおろしたい気持ち・・・
今まで集団感染が国内で発生していないにしろ、牡蠣はハイリスクな食べ物
肝炎になっていないのはお店の管理のおかげと、運が良かったということなのかもしれません
(もしくは鈍感すぎて気づいていなかったか・・・)
経口摂取で感染するはずのウイルスが性交渉で感染とはこれいかにといった感じですが、もともと糞便中にウイルスが排泄されるということなので、男性vs.男性のセックスだと容易にウイルスに接触してしまうと言うわけなのです
ラテックス製だったりポリウレタン製だったりする避妊具(男性vs.男性の場合は避妊目的で使うわけではないでしょうが)を装着していても、扱うときに素手で触れてしまったらどうしようもありません
あと直接お尻をペロリアンするともちろん感染してしまうでしょう
感染経路として性交渉が台頭してくると、我々も診療上注意が必要です
肝炎の症状は本当に分かりにくいです
肝炎の症状にはウイルス感染に伴う、一般的な「かぜから上気道症状を取り除いたみたいな症状」と、「肝炎による肝臓の障害」がありますが、よほど悪くならないと肝腫大が起きたり黄疸を来したりしないので、初期から肝炎と診断するのはなかなかに困難です
特に若い人では肝炎症状が出にくいようで、余計に診断を難しくします
とは言っても、積極的に肝炎リスクを聞こうと思い、かぜで訪れた男性全員に
「男性とのセックスを楽しまれることがありますか?」
なんて聞こうものなら、頭おかしいと思われてしまいそうです
(あ、別に性別がどうであれ恋愛感情をいだくことに偏見はないですし、男と男も別に構わないと思っています。ただ、男性同士のセックスは特に安全にご配慮を・・・。男女間の性交渉においても、お尻ペロリアンはそれなりのリスクが伴うことも知っておきましょう。)
ともあれ、肝炎を疑ったときに、生物を摂取していないからといってA型肝炎の可能性を早々に否定するのはよくなさそうですし、感染経路として性交渉もあり得るという点について、我々は頭においておかねばなりません
救急医として啓発できることは少ないかもしれませんが、もう手洗い励行するしかないですよね
食事の前後に手洗い
性交渉の前後に手洗い
性交前の精巧な手洗いで性交での感染予防に成功するのです
セイコーセイコー言ってるとセイコーがゲシュタルト崩壊しそうですが、僕の時計はSEIKOではなく、オリエントとG-SHOCKとApple Watchです・・・
はい、話を戻して
経口摂取するときの注意を追加すると(うんこじゃなくて魚介類とかですよ)、なるべく火を入れて食べてくださいというくらいですかね……
感染予防って大変だ
これからますます寒くなり、真牡蠣のおいしい季節になってきます。くれぐれも用心してください。
なお、A型肝炎は感染して発症したら強い免疫ができて、二度とかからないとされる疾患です
ですから、A型肝炎はワクチンで予防できることが知られています
日本では、不活化ワクチンを2~4週間の間隔で2回接種します
有効な抗体価が得られるとされているのは2回目の接種から2週間たってからなので、旅行などでアジアやアフリカにいくためにワクチンを考えている人は、余裕を持ったスケジューリングが必要です
さらに半年後に3回目の追加接種をすると免疫が強化され、5年間は免疫が残ります
長期滞在する人などは特に、できる限りこのペースで打ちたいところです
来年インドでアジア救急医学会・・・
ワクチン打っとかなきゃかな