救急対応をしていると
「え? それで救急車呼んだの? 本当に?」
と思わずにはいられない事案にたびたび遭遇します
例えば
さっきインフルエンザと診断され処方を受けたが、発熱が続くので救急要請
なんらかの虫に朝刺されて、夕方になっても痒みが続くので救急要請
鼻血が出て、今は止まっているけれど、また出たら心配なので救急要請
昼間にかかりつけに行き損ねたため、継続処方を希望して救急要請
天候が悪く、予約に遅れそうだったので救急要請
予約に遅れそうだからという気遣いはありがたいのですが、完全に救急車をタクシー扱いですよね
失礼きわまりありません・・・
しかし救急隊は呼ばれたら出動し、話を聞いて、なんとか搬送先を探さねばならないことになっておりますので、上記のような要請にも優しく応え続けるわけです
何かを頼る、誰かを頼ることは大切なことだし、頼れる人がいるっていい社会だと思います
が・・・
ここで忘れてはならないのが、人も時間もお金も有限ということです
不安が募るというのは理解できますが、全ての不安に専門家が応え続けていると、社会は回らなくなってしまいます
そこで総務省が、電話でこうした不要不急(言い過ぎ?)な要請を減らすべく、不安の声を聞く窓口を開設しました
「#7119」
救急車を要請した方がいいかどうか分からない、夜間休日にどこの病院に行っていいのか分からないという声に対応すべく、総務省が普及を進めている電話相談窓口です
デーモン閣下も啓発してくれていました
「#7119」に電話をかけると担当の相談員が応えてくれ、救急車を呼ぶべきか、受診するならどこの病院がよいかといった情報を提供してくれます
場合によっては医師や看護師の判断をあおぐ事もできます
一見して素晴らしい制度だと思います
しかし、なかなか普及が進まないということで問題となっているのです
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6304417
現在のところ、この制度が導入されているのは
9都府県と、一部地域のみ
なぜ導入が進まないのかというと
「人件費が足りない」
とのことです
確かに、24時間365日体制で医師、そして看護師を常駐させておくとなると、金銭面で難しいでしょう
そもそも、そこにいてくれる人材をどのように確保するかという問題も生じます
なんぼ電話を受けても一銭にもならないわけで、そこに資源をどれだけ割くかというのは非常に悩ましい問題です
また、電話のみで断定的な事を述べるのも大変難しい話で、結局119を勧めるとなると、人と時間とお金をかけて何をしているのか、わけが分からなくなってしまいます
軽症(または無症状)での救急要請や、電話サービスの普及が進まない現象は、救急医療が無料のサービスであるという幻想が招いている事なのだろうと思っています
有事の際にお金がかからないという状況は理想的ですし、そういう社会を目指すべきだともちろん思います
いまどうなっているかというと、日本は理想にだいぶ近いですよね
救急車はお金を払わなくて済みますし、どんな症状であっても診療費は全額支払いしなくてもよい環境です
ただ、これはその都度お金を払っていないだけで、基本的には税金や保険、つまりみんなのお金で運用しています
この理想的なシステムはみんなで維持しているものであるはずなのですが、そういう意識が希薄になってしまっているのではないかと思うことも多いです
自治体によっては、子どもの医療費を「無料」と打ち出してしまっているところもあり、この意識低下に拍車をかけている気がします
無料はないでしょう・・・・
誰かが払っているか、医療従事者が無償奉仕しなければそんなことは起こり得ないのですから・・・
小児の医療費については、救急受診の時間外加算分まで補填されるようですので、不要不急の受診は減るわけがありません
前述の#7119も、救急が無料サービスという前提であれば、利用するにあたりわざわざ電話で確認するメリットはどこにもありません
電話した結果、サービスを利用できなくなるかもしれない可能性もあるわけですから
でも、無料じゃないんですよ
救急搬送のシステムを維持したり、救急医療を安価に受けたり、電話サービスを受けられるのは、みんながお金払っているからです
無償奉仕ではないのです
あくまでも個人的意見ですし、自治体HPもわかりやすい広報を心がけているのだとは思いますが
「自己負担無料」ではなく
「公費負担全額」と書くほうがいいのではないか
と思ったり・・・