医療機関を訪れた妊婦が、Twitterで
妊婦加算で診療費が増額された
という旨の発信をして反響を呼びました
今年の4月の診療報酬改定で、初診料に75点、再診料に38点の上乗せをするということになっていました
これがあまりマスコミでも言われなかったので
知らん間に妊婦税を課された
などという声とともに大炎上につながりました
初診時750円、都度380円
3割自己負担といえども、繰り返し受診をするなら結構負担となります
また、時間外診療には200点、休日は365点、深夜には695点ということで、こちらも追加で相当の負担となります
なんで妊婦加算を取るかと言うと、妊婦にそれだけの配慮が必要だからです
救急で妊婦さんが来ることは珍しいことではないです
我々はその都度、一人の患者さんではなく、二人以上の患者さんだと思って対応しています
交通事故で搬送されたような場合、母体の命が最優先なのは当然なのですが、母体の呼吸や循環動態の変動は胎児への影響も強いため、敏感に反応する必要があります
外傷初期診療ガイドラインでも、母体のバイタルサインの安定化を目指したのち、速やかに胎児評価と産科介入することが望ましいとしています
軽症外傷でも死産や流産に繋がりますので、これは救命救急センターだけの問題ではありません
外傷による流産や死産の6割は軽症外傷由来です
特に胎児の生存が見込めるような妊娠22週を超えてくるような場合には、しっかりと胎児の動態を把握し、必要とあれば緊急で帝王切開を考える必要もあるのです
外傷に限らず、薬剤の使用や検査についてもいつもより気を遣うことになります
胎児に影響のあるだろう薬剤はできるだけ使いたくありませんし、放射線検査についても、出来る限り腹部を防護して撮影したいと思うのが人情です
要するに、妊婦さんだけでなく、胎児も一緒に受診しているという状況ですので、それに対する報酬をつけましょうということなのです
妊婦に、より安全な医療を提供できるような方向を目指しているわけで、至極まっとうな考え方だと思います
その他、救急では
妊婦さんの受け入れはできません
となることは珍しくないかもしれません
加算をつけるから、きちんと勉強して積極的に妊婦さんそして胎児の安全を確保してくださいよ、そのために加算ですよということなので、やはり加算は社会にとってはむしろ喜ばしいことだと思います
安全はタダでは買えません
(やばい、最近お金の話ばかりしてる・・・)
問題の根幹は、妊婦加算をどこに求めたかと言うことになるかと思います
妊婦本人に求めるより、みんなで負担しあって、日本の妊婦の安全確保につなげて、新しい命を応援しようという方向性であれば、今回のような炎上もなかったと思われます
あとは妊婦加算に対する情報提供が足りなかったことは否めないと思います
母子手帳にしっかり記載しておくことや、行政からの働きかけがもう少し親切になされても良かったのかとも思います
(それにもお金がかかりますが)
個人的には、より安全な医療を提供していただけるならありがたいことで、それを無料でよこせとはやっぱり言えないよなと思うのです
過去と比較することが適切かわかりませんが、全体を見れば同じ金額で得られる医療の質は向上しているのではないかと思います
とはいえ、妊婦加算を取られたくないという理由で、嘘をつく人がでてくるかもしれないなど、望ましくない影響はあると思います
妊娠しているかどうか他から見てわかりにくい、実は胎児にとって影響の多い時期に、妊婦じゃないものとして扱われてしまうようなことは避けなくてはなりません
質が高くなっていく医療に相応の報酬を
ということを、根気よく説明して社会で共有していくしかないのでしょうね