毎日繰り広げられる当院救急部の朝練(朝の勉強会)
新入部員(研修医)も、日々朝から部活動に勤しんでくれています
たびたび救急科以外の各科からレクチャーに来てくれるので、僕らも勉強になっています
そんな中、先日循環器科のレジデントが心不全の治療についてレクチャーをしてくれたのですが、印象深い言葉がありました
それは
「急性心不全の治療=ラシックスと思わないで下さい」
というものでした
ラシックスはループ利尿薬であるFurosemideの商品名
経口投与での持続時間が6時間ほどなので
Last 6 hours
→Last 6
→ラシックス
とよく言われます
しかしこれ、どこまで本当なのでしょう
ラキソベロンの語源を、緩下剤を表すLaxativeという単語に出会うまでは
「楽にクソがベロン」
であるという友人の話を信じかけていたので、まことしやかに囁かれる話も疑ってかかってしまう自分がいます
(ていうかベロンってなんだよ…毎日ベロンベロンうんこだしてんのかよ…)
サノフィ・アベンティスの人でご存知の方は、ぜひともこっそり真相をお知らせ下さい・・・
さて、話を戻しましてFrosemide
どうしても研修医の頃は病態と治療を一対一対応で覚えたくなるもので
心不全で呼吸困難→利尿薬
と結びつけてしまいがち
循環器のレジデントはそういった反応に警鐘を鳴らしてくれたものと思います
そうは言っても利尿薬使うじゃん!?
って思いますよね?
いや本当に使わないのですよ
近年、急性心不全の治療に関して、クリニカルシナリオという概念が提唱されました(文献1,2、図1)
これは左室前負荷と後負荷の具合や、背景疾患から、いくつかの病態に分類して治療法を決定するものです。クリニカルシナリオ略してCS(シーエス)と呼んだりします。
図1 循環器学会のガイドラインから引用
CS1は血圧上昇群で急激に進行するタイプのシナリオとなります
広範な肺うっ血から呼吸困難を呈するものの、全身の浮腫は軽度というパターン
血圧の上昇に伴う後負荷の急速な上昇による急性心不全で、左室収縮は保たれていることが多いです
しんどくてカテコラミンがでて抹消血管が収縮し、さらに後負荷が増大するという悪循環に陥ります
治療は血圧を下げることが重要なので、よほどの容量負荷がある場合以外は、利尿薬ではなく硝酸薬の使用が推奨されます
また、治療にNPPVの使用が推奨されます
救急で良くみるのはこのタイプだったりします
なので実のところ
「救急搬送される急性心不全の方に利尿薬はあまり使わなくてよい」
と言っても過言ではないかもしれません
(体液貯留をしっかり評価して必要なら使ってください)
ぜひクリニカルシナリオ分類を使いこなしてほしいなと思います
1) Mebazaa A, et al: Practical recommendations for prehospital and early in-hospital management of patients presenting with acute heart failure syndromes. Crit Care Med, 36: S129-S139, 2008
2) 急性心不全治療ガイドライン
(http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_izumi_d.pdf)